日本語講師:松井 理咲子





「日本語教師としての強みを活かして、外国人のための教育をサポートしていきたい。」

豊田に住む外国人親子のために、イベントに参加しながら子連れで日本語を学べる場を提供する「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」の代表である松井 理咲子(まつい りさこ)さん。ベビーマッサージ、キッズリトミック、ママヨガなどを通し、見知らぬ土地で孤独になりがちな外国人ママが日々をより楽しく過ごせるように活動をしているという松井さんにお話を伺ってきました。

松井 理咲子(まつい りさこ)

NPO市民活動団体「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」代表
日本語講師
CERIE認定ベビーマッサージインストラクター

1982年生まれ
一宮市出身


こどもといっしょの日本語クラスLearn Japanese with your kids〜Las jirafas
facebook⇒https://www.facebook.com/lj4mama/

活動のシンボルとなる動物を団体名に。

■猿渡 松井さんと一番はじめにお会いしたのは、3年前くらいだったでしょうか?

□松井 そうですね、2015年だからそれくらいかな。子育てネットワーク会議で一番はじめに会ったんですよね。多分、そのときがちょうど、こういう活動をし始めてるんですっていうのを、周りに言った場だった気がします。

■猿渡
私も初めて参加して、豊田市ってこんなにいろんな子育て関係の団体があるんだって知りました。松井さんの団体名、「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」って優しい響きですね。どうしてこの名前にされたんですか?

□松井
これは、スペイン語で、複数形の「キリン」っていう意味です。
この活動を始めるきっかけになった親子がベネズエラ出身で、スペイン語を話していたんですね。その子とうちの子にプレゼントした対のキリンのソフィー人形があるんですけど、私の活動の思いが詰まったシンボルみたいに思えたので、キリンの名前を付けました。単数じゃなくて複数で……1人じゃなくて、他のみんなも一緒に、という意味合いです。

■猿渡
意味は、キリンなんですね、可愛いです。

□松井
本当ですか? ありがとうございます。でも、発音が合っているのかわからないとよく言われています……気に入ってるので、変える気はないんですけど(笑)

■猿渡
イイと思います(笑)

外国人のママたちが気軽に外にでられる場をつくりたい。

■猿渡
結婚後、どういうきっかけで「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」を始められたんでしょうか?

□松井
私、実は、本職は日本語講師なんです。子どもが産まれるまでやっていて、今も所属しています。生徒さんの中で、たまたま私と同じ時期に妊娠・出産された方がいました。先ほどのベネズエラ出身の母子です。
産後、私はヨガ、フラダンス、ベビマなどにお出かけして、親と離れたところに住みながらも、それなりにちょっとリラックスしながら楽しくやっていたんです。でも、その方は日本語が分からないから、孤独というか、なかなか積極的に出掛けられないようでした。そんな現状を聞いて、「孤独に感じている人たちを気軽に外に出してあげたいな」「異国の地に住んでいる外国人のママたちが、大事な、海外に住みながら子育てをするという貴重な時間を無駄にしないようにしてあげたいな」と思ったのがきっかけですね。

■猿渡
豊田市って他の地域と比べると、海外の方が多いイメージと言われるんですが、実感としてやはり多いですか?

□松井
多いですね。ちゃんとした数字では分からないんですが……こんな田舎にも関わらず、と言っては失礼かもしれませんが、色んな国の方が多いっていうのはすごく感じますね。
アジアだけ、ブラジルだけというわけでなく、欧州とか、ロシアとかもいるし。不思議な街ですね。私は出身が一宮市なんですが、豊田市に来て海外の方が多いのをとても実感しています。
そういった異国の地に来て、子育てをしている人たちを外に連れ出したいなっていう思いで始めたのが、「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」です。

子どもと一緒に外に出る。日本語を学ぶ。

■猿渡
「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」では、現在はどんな活動をされているんですか?

□松井
市民活動センターで、ヨガやリトミック教室、それから、私がベビーマッサージの資格を持っているので、外国人のママ向けにイベントなどを行っています。授業はすべて日本語で行い、それ以外の諸連絡は英語でしています。
最終的な目標は、このような活動を通して、子連れの外国人でも日本語を勉強できる場を持てるということです。

■猿渡
学べる場っていいですね。ちなみに、松井さんご自身は、何か国語話せるんですか?

□松井
私は全然……流暢に話せるといったら日本語だけです。
英語は、なんとなくのコミュニケーションがとれ、相手の言いたいことがなんとなくつかめるよという程度かな。

■猿渡
そうだったんですね、ちょっと意外でした。一番はじめにお会いしたときに、「情報サイトにはできれば外国人の方たち向けに英語以外にポルトガル語を入れてほしい」とおっしゃっていたのがすごい心に残っていて。てっきりポルトガル語とか話せるのかと(笑)

□松井
すごい、覚えててくださったんですね(笑)私は話せないんですが……ポルトガルの方が豊田市には多いので、そう言ったんだと思います。トヨタ自動車関係の人が永覚、あとはいろんな仕事で日本に来ている方が保見団地に多く住んでるんです。保見のほうにはブラジルの人が多いんですけど、あとはペルーの人とか。結構、スペイン語圏の人も来ていたりしますね。人数的なことは分からないんですけど。どこを見ても、ポルトガルの人は多いですね。

■猿渡
そうなんですね。今、教室に来られる方もポルトガルの方が多いんですか?

□松井
いえ、いろいろな国の方がいらっしゃいますね。1教室に2、3組ぐらいで、国はバラバラですね。フィリピン、中国、ボリビア、パキスタン、トルコ……日本語講師をしているといろんな国の方とお会いしますが、「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」の教室に来てくださった方々はこんなところでしょうか。

■猿渡
日本語があまり分からない方でも安心してイベントに来られるのは、日本語講師という松井さんの職業が生きているからなんでしょうね。

□松井
それが強みになっていればいいなと。外国人ママが外に出るきっかけがつくれて、最終的に彼らが日本語を学べるという目標を達成できたらなと思っています。

日本語講師としての強みを活動に活かしていく。

■猿渡
本業の日本語講師は、どれくらいされているんですか?

□松井
大学が文学部だったんですが、その副専攻に日本語講師資格を取れるものがあって、そこで420時間の規定の学習を終えると資格をもらえるんです。結婚して、落ち着いたら講師をしたいなと思っていたんですが、ちょうどタイミングがあって、それで飛び込んだのが結婚して1年ぐらい経ってから……もう6年くらい経ちますね。今も教室には所属しています。

■猿渡
もともと、日本語講師に興味があったんですか?

□松井
多分、じんわりと興味はあったんだと思います。18歳のころの夢が、10年後にキャリアウーマンとして働いていることだったんですね。だから、卒業後はまず一生懸命働いて、周りの人から認められたい!と思っていました。
大学1年生のときは色んなことを学べたので、いろいろ見ていって。その中で興味があったのが日本語講師でした。日本文化が好きなので、いろいろな国に自分の友だちができると面白いだろうなと思って。それで、日本の言葉や文化を伝えながら、外国の方と関われる日本語講師の副専攻をとったんです。でも、新卒ではまったく関係ない会社に勤めて。結婚をして落ち着いたので、資格を活かそうと思って、日本語講師の道へという感じです。

■猿渡
その後、日本語講師として所属しながらも、団体を立ち上げられたんですね。

□松井
そうですね。所属する学校は子連れでは働けないところで、生徒さんも子連れの方はお断りしていたんです。それが当たり前となっていると思いますし、受け入れる会社としては大変だからって分かるんですけど。……もどかしかったんですよね、なんで子連れで仕事ができないんだろう、子連れで学べないんだろうと。じゃあそのお母さんどうなるんだろうと思って。
だからこそ、私もお客さんも子連れで来られて、かつ日本語を教えられる形に。さらに、子育て期間中という、ちょっと限られた期間を楽しく過ごしてほしいと思ったのが強かったんです。
団体は、個人でやるよりも、団体として成り立っているところに来るほうが、初めての人でもちょっとでも安心できるかなと思って。サークルみたいな形でもいいから、どこかに所属する形の方が、集客や施設利用にも信頼がおけるので、団体という形にしました。

■猿渡
最近は子連れで行ける教室なども増えましたが、まだまだ敷居は高い部分もありますからね。……今、教室に、参加されている方はどれぐらいいらっしゃるんですか?

□松井
今現在は、あまり動けていないので少ないですね。集客がなにぶん難しくて。外国人のママさん向けなので、広報での集客は、英語や外国語のページに載せてもらわないと目につかないのですが、掲載される原稿が多いらしくて、なかなか掲載に当たらなくて。今は、ほとんどがFacebookを見て来ていただいたり、個別に知り合いに声をかけたりで集客している感じです。
あとは、日本語教室に顔を出して、まずは私の顔を知ってもらって、顔見知りになるというのを地道にやっています。「子供が産まれたら、あの人のところだったら行けるよ」「多分楽しい時間が過ごせるんだろう」と思ってもらえればいいなと思って。
お客さんに来てもらうことと、活動を知ってもらうことが当面の課題ですね。そこをクリアできて軌道に乗れれば、また次のステップに上がれるのかなと思っていますね。

■猿渡
自分からの宣伝でなくて、こういった違う視点からの記事を目にした人が、周りに紹介したり声かけしたりというところで繋がっていってほしいですね。

□松井
そうですね。実際そういう連絡も入ったりします。そのお友達関係でフォローできないような、例えばアカデミックに日本語を学びたいとか、そういうところに「Las jirafas(ラ・ヒラッファ)」を使ってもらえると嬉しいなと思います。より多くの人に知ってもらいたいです。

豊田市をもっと国際的な街にしたい。

■猿渡
ありがとうございます。今後、松井さんがやっていきたいことは、どんなことですか?

□松井
やりたいこと、やることがいっぱいあるから難しいんですけど……私、教育が世界を救うと思っているんですね。だから、私は、外国人のための教育をサポートしていきたいなと思っています。実際に周りの市町村で、外国人の教育をやっていらっしゃるNPOの方がたくさんいらっしゃって、そういう方を参考に、私のできる範囲でサポートできればなと。ゆくゆくは小学校低学年までの子に、日本の文化や、日本で生活することに希望を持てるようにサポートできたらいいかなって。
日本人については、多文化共生じゃないですけど、同じ人間であり、ちょっと知らない言葉を知っているだけの相手と心を通わせ、好奇心を持って、いいところは積極的に吸収し、お互いにないものをもらいあってほしいなと思います。

■猿渡
外国人向けのサポートをしながら、逆に日本人にも多文化共生を同時に発信していきたいんですね。

□松井
そうですね。多文化共生においては、日本全体の課題となっています。豊田市が周りよりも国際的な街だよねと言われ、人種の違いを超えて相互理解ができているような、ちょっと進んでるおもしろい街であるといいなと。今できることから少しずつ、私なりにサポートしていきたいと思っています。

取材・文:猿渡 菜都美