キャリアコンサルタント:鬼木 利恵





「落ち込んだことは数知れず。それでも『やってみよう』という気持ちは忘れない。」

株式会社eight・代表取締役の鬼木 利恵さん。
東京で就職し結婚。その後、旦那さんの転勤に合わせ、三重・奈良と住み渡り、2013年冬から豊田に定住しています。2015年3月に株式会社eightを設立。
働く女性を支援したいという想いで活動する鬼木さんにお話を伺ってきました。

鬼木 利恵(おにき りえ)

株式会社eight代表取締役、キャリアカウンセラー

1977年生まれ
茨城県出身


HP⇒https://www.8eight8.jp/
blog⇒https://ameblo.jp/eight-toyota/
Facebook⇒https://facebook.com/8eight8.jp
Twitter⇒@OnikiRie
Instagram⇒@rittanoni

どこにいても仕事ができるよう独立を決意。

■猿渡
生まれは茨城県日立市なんですね。

□鬼木
はい。生まれて大学院まで茨城にいまして。
そこから社会に飛び出し東京に出て、夫と遠距離しているときに1番上の子を授かったんです。

■猿渡
そうだったんですね。

□鬼木
じゃあ、結婚したほうがいいよねって結婚することになったんですけど、それと同じぐらいのタイミングで夫が三重県に転勤になるっていう。
結婚するとなれば一緒に……子どもがいなければまた別だけど、子どももできるし一緒にっていうことで、ついて行くことにしたんです。
それで私も東京から名古屋の勤務先に転勤させてもらうことにして、そしたらまた3、4年ぐらいして、奈良に転勤に。私も、また転勤しようかと思ったんですけど、関西は大阪しか勤務先がなくて。
三重のときに名古屋も通うのしんどかったから、奈良に行って「どこ行っても仕事ができるようなことをしよう」と思って独立をしようと思ったんです。

■猿渡
奈良で独立して、1番初めに始めた事業はどんなことだったんですか?

□鬼木
十人十色、いろいろ人がいるよねっていうので『COLOR』という屋号でスタートしました。『働く女性をとにかくキャリア支援したい』っていうのが大きな目的だったので、まずはキャリアコンサルタントの資格を取りに。
それと同時に、キャリアを考える場を提供しようとキャリアサロンを作ったんですが、いきなりキャリアサロンとかいっても、奈良の女性は働くっていうことに対してだいぶ後ろ向きな感じだったんです。
だけど、共働きの人たちはいるだろうなって思って。

その人たちに訴えたいと思って考えたのが、土日に親子でコミュニケーションとる機会を提供する、料理教室です。
平日ぶわーって走って、土日家事・育児に追われみたいな感じだったのを、旦那さんが料理教室に子ども連れてきて、旦那さんと一緒に料理しながら、お昼ご飯もそこで食べて半日ぐらい過ごしたら、働く母親は超ラッキーかなって。
ちょうど「COLOR通信」っていうのも発行してて、そこにキャリアのことをずらっと情報を載せてたんです。
だから、フックは料理教室で、そこからキャリアサロンに誘導するっていうことを始めたのがスタートだったかな。

2011年からスタートして、最初は本当、自分の家族からスタートして徐々に広がってという感じです。

限界や壁を超えた先に見えるものもある。

■猿渡
転換期がいろいろ重なったじゃないですか。妊娠だったりリーマンショックだったり。
そこからさらに独立をしようっていうのを決めたときに、子育てや仕事に不安はなかったですか?

□鬼木
不安ではあったと思います。ただ、それ以上にどっちかっていうとわくわくしてたっていうか。
仕事を辞めたときに、たまたま図書館で手にとった『働く母親が危ない』とかっていうぶ厚い本があって。それを読んでて、私、会社員時代に自分ですごい抱え込んだかなとか、もっと子どもがいるっていうことは良いことなんだって思っていいんだとか、もっとわがままを言えばよかったなと思って。会社にも、家庭にも、いろんな人にも。そうしたら、もっといろいろできたのになっていう。
自分で壁を……天井をつくってたの自分だったなって。やろうとして手をあげるとめっちゃ迷惑かけたりするのを、すごく気に病んでたんだけど、そうじゃなくていいんだっていうふうに思えて。
だから、わくわくしてやるときは思いっきりやろうっていうふうに決めてたんで。不安というかそっちのほうが強くて。

■猿渡
自分が思いっきりやることに対して、今までは壁や天井を自分で作ってたっていうのに気づいて、それをとっぱらえたから前を向けたってことですかね。

□鬼木
そんな感じですかね。そのときは、まだやってもいないので、妄想ばっかり膨らんでるから(笑)
どっちかっていうとお気楽というか。夢が広がってあれやろう、これやろうっていう、本当に。

■猿渡
やりたいことの方向性が決まったのはいつくらいなんですか?

□鬼木
えっと、ある塾の会社さんが、「うち、就活塾やってるんだよね」って言って、「鬼木さんちょっと手伝ってくれない?」って言われてやり始めたときかな。
当時10人ちょっと担当していて。本当に優秀ないい子ばっかりだったんだけど、キャリアのこととか棚卸ししてたら、ほとんどの学生が親に敷かれたレールに乗っかってて……しまいには就職も「親がいいって言うんでこっちにしました」っていうの7割ぐらい。12人いたら8,9人がなんかしら「親が、親が」言うんですよ。

■猿渡
そんなに……!

□鬼木
びっくりですよね。……奈良って専業主婦率No.1なんですね。
いろいろデータとか見比べて考えていったら、お母さんが自分の人生を子に託しちゃってるって思って。
そりゃ子どもたちは自分の人生を生きられないなって思ったときに、私のキャリア支援の方向性が『子どもたちのためにやろう』ってはまったんです。
今までは自分のような女性をって考えだったんだけど、そこから、子どもたちの未来のために女性のキャリア支援をしていこうって。
お母さんには自分の人生を生きてほしい。
そうしたら子ども勝手に育つからって思って、大きく方向転換を。
ちょうど2012年に入るくらいのことです。

人との縁がつながり会社設立へ。

■猿渡
活動も順調で、キャリア支援の方向性が定着し始めたところで……

□鬼木
あ、次は豊田市へ引越し、みたいな。

■猿渡
そのときは正直どんな気持ちだったんですか?

□鬼木
けっこう複雑な気持ちになって、それこそ涙が出ました。
積み上げてきたものがリセットされるかもしれないって思ったときに、開拓してようやくここまで来たのに、ああ、これで終わっちゃうのかなって。
でも、どこに行ってもやれる仕事をしようと思って独立をしたわけだから、辞めずに次の新天地でも何かしらやり続けたいと。
特に子どもたちの未来のためにっていう気持ちはすごい大きかったので。
自分のキャリアをちゃんと整理するってことができたから、なんとかなるかなっていう気持ちで奈良とお別れを。

それで、2013年の12月のクリスマスイブに豊田に引っ越してきて……だから、その年はわが家のサンタクロースがどっかいっちゃって(笑)
「やばい、やばい、サンタさんちょっと引っ越したばっかりで迷ってるかも」とか言いながらごまかしながら。
そのとき、子どもは小学1年生の3学期だから6歳、3歳ぐらい。

■猿渡
まだサンタさん時期ですね(笑)

□鬼木
そう、全然バリバリ(笑)
そんな感じでバタバタと引越ししてたら年が明けて。
真ん中の子が年少だったんですが、保育園を途中入園よりは、あと3ヶ月待って年中から入園させて……2014年4月から、そこから豊田で始動しようかなと。
だから3ヶ月ぐらいはのんびり過ごしてたかな。

■猿渡
豊田での活動開始のきっかけは何だったんですか?

□鬼木
ちょうど、奈良から豊田に来るころに知り合いから『AsMama』のサービスを教えてもらって。そのママサポーターになって、お手伝いに行ったイベントでたまたまグループが一緒になった豊田の人がいて、初のママ友になったんです。
その人から「利恵ちゃんキャリアコンサルタントだよね?市役所のものづくりの人が県のキャリアコンサルタント探してるから豊田でやってみない?」って言われて「やります」って手をあげて。
それで市役所ともつながりができて、そんな感じで最初は。

■猿渡
つながりってすごいですね。

□鬼木
本当に。
その後2014年夏ぐらいに、そのママ友さんから「最近コーチングとかでママさんの起業応援し始めてる人がいて、利恵ちゃん興味ない?どうやら同じようなことやりたいみたいだよ。」って言われて、会いに行ったら、「こんなことやりたくて、こんなこと考えてるんだけど」って、すごい勢いでわーって想いをぶつけてきたのが、一緒にeightを立ち上げることになる日高千尋ちゃん。
それを聞いて、「奈良で似たことやってて、こういうふうにやってきたら結構うまくいったよ」みたいな話をしてたら、千尋ちゃんが「一緒にやってくれない?」みたいな話になって、いきなりだったから、「話だけは全然聞くよ」って初めは。

そうしたら、千尋ちゃんがママたちが仕事になるように話し合いをしてたり、市の制度を使って起業を相談してたり、JCのイノベーションプロジェクトっていうのに一緒に参加しないかって誘ってくれたり。
そこで「出資するからやらない?」っていう出資者さんと出会って。
「やりません、やりません」って最初は言ってて、「うちはこういうことやりたい、それでもよければやります」って言ったら「なんでもいいからやって」って(笑)
「どうなるか分からないし辞めたほうがいい」とか何を言っても「大丈夫。うちの妻を見ていても女性のキャリア支援は大事って思うから」って。
そうするうちに断る理由がどんどんなくなってきて「まあいいか」って……「まわりの人の話も悪い人じゃないらしいし」とか言って。

それで出資してもらって、私たちも今までの作ってきた事業資金で後押しして、「やってみようか」で株式会社を設立したのが2015年3月っていう感じですね。

■猿渡
パートナーとなる人と出会って、1年も経たないうちに会社に。

□鬼木
そう。10月に創業……『eight』って名前でスタートして、その半年たらずで。会社にするって決まったのは年末とか年始ぐらいかな。
本当にいろんな偶然が重なって立ち上がってっていう。

子どもには背中を見せ、社会には恩返しをしていく。

■猿渡
話が変わるんですけど、今、経営者という立場でeightを運営されていますが、子育て……3人のお子さんの育児と仕事の折り合いだったり、時間の取り方はどういうふうにしてますか?

□鬼木
上の子2人が4歳、1歳ときから独立してるんですけど、当時はまだやっぱり両立が上手くいかなくって。
それこそ夫とすごい険悪……ってなってた時期もありました、しかも4歳、1歳ってめっちゃ大変時期だったから。でも、今は一番下の子がちっちゃっくても、そのときの経験からおさえるべきところとか、大丈夫だろうみたいなところとかが経験のなかからできて。

■猿渡
手の抜き方というか、おさえるところはココっていうのが3人目にして分かったという感じですかね。

□鬼木
分かったと言っていいのかはわかんないけど、親としては罪悪感とか感じずに仕事ができています。
子どもはどう思ってるかは分からないけど、背中を見て育つっていう言葉通りだろうなと思って。大変と感じれば大変と感じるだろうし。
それは本当子どもの人生だから。すっごい忙しい両親のもとに生まれたのは子どもの人生。それは上の子のときから思っていて。申し訳ないなという前に「これはあなたの人生だよね」っていうふうに思うようにしてやってます。
けど正解はないので。今のところは、のびのび、みんなやっているのでいいかなと。

■猿渡
いいですね。

□鬼木
そうですね。でも子どもたちが何か本当に大変なときとか、絶対に私や親が必要な場面っていうのは、そこはどんな大切な仕事が入ってたとしても割り切ろうっていうのはもともと決めていて。選択を迫られたときはすごいたくさんあるんだけど、ここまでは大丈夫みたいな感じのことは決めて、何とか折り合いをつけてるかなという感じです。

■猿渡
ありがとうございます。……鬼木さんの仕事に対する信念というか、仕事ってこういうふうなものってどんなものですか?

□鬼木
そうですね、仕事はなくてはならないものだなっていうのは根底にあって。それは別にお金が発生する、しないじゃなくて。
自分でこの役割を担うんだっていうものがほしいというか、あったほうがいいだろうなっていう、すごく思っています。だから自分にとってはなくてはならないと。

■猿渡
結婚して、子育てしてて、それでも外に出るっていう決め手になったものはなにかあります?

□鬼木
専業主婦をしながらだとしても、多分なにかやってただろうなって思います。
私の場合、自分が生まれてからずっと勉強もして、会社に入って、学んできたことっていうのは、どこかで絶対恩返しをしなきゃいけないっていうふうに思っていて。恩返しは専業主婦ではできないかなと。
家庭にいれば家族のためにってなるんだけど、私が受けてきた恩はそれだけでは足りない。家庭に全部つぎ込んだら超過保護過干渉になっちゃう(笑)。
だから専業主婦やりながらでも、今もそうだけど、主婦しながらでもできることをっていう。自分のキャパを超えない範囲で外にも目を向けて恩返しをしていかなきゃいけないなっていうのがあって。その恩返しの1つが、今は子どもたちの未来のためにお母さんの人生を取り戻してほしいっていう。
そのきっかけづくりを私は生涯かけて社会に還元していくんだっていう、本当そんな気持ちが強いからかな。それが多分この仕事を選んでる理由、っていう感じです。

愚痴っぽくなってきたなと思ったら、気軽にeightへ。

■猿渡
子どもの未来のためにお母さんの人生をっていうことですけど、こんな人たちにeightへ来てほしいっていうのありますか?

□鬼木
そうですね。やっぱり今の自分に納得してないというか、今の自分が送ってる生活とか人生とかに、何か違和感を感じていたりとかっていう人たちはみんな、何かヒントをもらえそうだと思ったら、ぜひ会いに来てほしいですね。起業するとかじゃなくて全然いいので。

内にこもって悶々とすると、本当に子どもにいっちゃうから。夫か子どもかみたいな感じで。夫にいくのもやっぱりよくない。夫にいっちゃうと夫が帰ってこなくなるから。それこそ本当に悪循環。残業なしって言われたらさ、家に帰りたくないのにっていう人結構多いんですよ。そういう悪循環を阻止したいので、今、悶々としてちょっと周囲にあたっちゃってるなとか、愚痴っぽくなってるなっていうお母さんがいればぜひ来てほしいなって思います。

■猿渡
ありがとうございます。実は私が1番初めに思っていたeightさんのイメージは起業ママさん向けのサポートとか研修などを行っている会社っていうイメージだったんです。
でも、言い方が少し難しいですけど、女性であれば、どんな人にも優しい会社っていう感じな印象をすごく受けました。

□鬼木
そうですね。もちろんコア事業は研修と起業支援ですが、女性が活き活きと、子どもを抱えながら、でもやりたいことを実現して。
アンテナを張って自分で引き寄せてやれる。そういうきっかけがいっぱいある町になれば良いし、eightに来てくれたらいろんな情報があって紹介もできる。
起業するしないに関係なく、まずは気軽に門をたたいてもらえたら嬉しいです。

取材・写真・文:猿渡 菜都美